対応の仕方
卒業生の話をします。
その生徒は、小学5年生のときにエッセンシャル・アカデミーに入会しました。本が好きで休み時間はよく読書をしていました。
小学6年生の終わりごろに新しい生徒が入ってきました。その生徒はいたずら好きで、いろいろな生徒にちょっかいを出していました。
ある日、私が授業を終え白版を消しているときに事件が起こりました。いつものように読書をしている生徒の本を、もう一人の生徒が教室に入ってきて取りました。そして、教室の出口まで行って取られた生徒を笑いながら見ていました。私は状況を見守るためにすぐに注意しませんでした。
本を取られた生徒はこのときどのような行動を取ったか。
①「本を返して。」といってにらみつけた。
②椅子からすぐに立ち、本を取った生徒を追いかけて力尽くで取り返そうとした。
③にらみも追いかけもせずにその場にいた。
この年齢の男子生徒ならば友達でもない知り合い程度の人にこのようなことをされたら①,②を選ぶことが多いです。そうなったら注意するつもりでした。しかし、その生徒が選んだのは③でした。
本を取った生徒は追いかけて欲しかったので、大きな足音をたててその場を立ち去りました。本を取られた生徒は、表情を変えずに席に座っていました。
5分後に本を取った生徒は戻ってきて、「ごめんね。」といって本を返しました。
私は一部始終を見ていてとても感心しました。もし①,②を選んでいたらけんかになるかもしれない。また、かまってくれたのでまた同じように本を取られるなどのちょっかいを出される可能性も高い。なぜなら、本を取った生徒は自分にとって興味深い反応がほしかったのだから。③を選べば本が返ってこない場合、その生徒は窃盗犯になってしまいます。先生などの大人に言えばうまく対応してくれるだろうし、本を取った生徒は叱られるだろう。だから、本を取った生徒には返す以外に方法はないのです。
小学6年生がここまで考えられるのがとても凄いことだと思いました。この日から、私は生徒たちによくこの話をします。対応の仕方を考えることで全く違う結果が得られるのだから。
この生徒は、駿台模試という一番難しい全国模試で数学1桁を3回、3科・5科総合で2桁を数回取っています。私立の1番いい高校、国立の1番いい大学に入学しました。それ以外の生徒でも、「わかる人」は対応の仕方に優れている傾向があります。日々の生活の中でより良い対応の仕方を考えてみませんか。